がんで障害年金が受け取れる場合

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 伊藤美穂

最終更新日:2023年01月23日

1 がんの障害認定基準

 障害年金はがんでも受け取ることができます。

 障害年金のがんの等級については、日本年金機構の障害認定基準第3第1章第16節に記載されています。

 障害年金の等級の審査の際は、がんそのものによる障害だけでなく、がんに対する治療の結果として起こる障害も含めて審査されています。

 ただし、がんで現れる症状やがんが発生する部位、治療の結果生じる症状は様々なため、具体的な数値や結果が認定基準に記載されているわけではありません。

 大腸がん、肺がん、胃がん、乳がんなど、がんは様々な臓器にでき、がんができたことで臓器の機能が低下したり、抗がん剤の投与等による副作用や転移などで全身が衰弱したり、寝たきりになったりすることもあります。

 抗がん剤による治療の副作用による倦怠感や痛み、貧血、嘔吐などの内部的な障害の場合であっても、その障害によって日常生活や就労に支障をきたしていることが認定されれば障害年金を受け取ることができます。

 等級の認定にあたっては、診断書の一般状態区分や障害の状態、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定するとされています。

2 がんで障害年金申請をする場合

 がんであっても、障害認定までには原則として初診日から1年6か月が必要です。

 ただし、直腸がんで人工肛門になったり、胃ろうになったりした場合や、肢体を切断したり、咽頭を全摘出した場合等には、1年6か月経過しなくても障害年金の申請ができることもあります。

 また、がんは転移することが多いですが、原発とされるものと組織上一致するか転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められますので、初診日は元々のがんで医師の診断を受けた日になります。

しかし、再発の際の初診日の判断が難しい場合もあります。

 がんは、急激に悪化することもありますので、がん治療のために休職や退職を余儀なくされることも多く、障害年金の申請が遅れることで生活や治療費に対する不安が大きくなってしまいます。

 がん患者の方ご自身で、心身が衰弱した時点で自分で障害年金申請をすることは難しく、治療をしながら書類を揃えて申請の準備をしなければなりません。

 また、そのときの治療内容によって衰弱や機能障害の程度が大きく異なることもあり、症状が軽い時期に事後重症の申請をしてしまうと、タイミングによっては実際よりも軽い等級とされてしまったり、等級が認定されないこともあります。

3 がんで障害年金申請をする際は専門家に相談を

 がんで障害年金の申請をする際には、総合的に認定されるため、認定されるかどうかの判断が非常に難しくなります。

 また、がんの場合は、医師に、一般的には「血液・造血器 その他の障害用の診断書に記入していただくことになるため、記入に慣れていない医師の場合は十分な記載がないこともあります。

 また、腎臓がんや肝臓がんの場合は「腎疾患・肝疾患の障害用」、肺がんの場合は「呼吸器疾患の障害用」、歩行困難等の場合は「肢体の障害用」等、がんの種類や症状によって、医師に作成してもらう診断書の種類が変わることもあります。

 がんで障害年金申請をすることは難しいため、専門家のサポートが必要です。

 がんで障害年金申請を考えたときには、当法人にご相談ください。

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